このコラムでは、成田亨の特撮におけるデザイン哲学、特に人間の視覚認知特性を活用した造形技法に焦点を当てます。
成田デザインの視覚認知への応用
成田亨の特撮におけるデザインは、彫刻家とデザイナーの双方の視点を統合した独自のアプローチを示しています。特に、人間の視覚認知特性の応用は、彼の作品の一つの特徴です。成田は、実際の大きさとは異なるスケールの怪獣を、スクリーン上でより大きく、また遠くに見せるために、視覚的な錯覚を利用したデザインを行いました。
レッドキングのデザイン
レッドキングのデザインは、このアプローチの代表例です。身体の下部を大きく、上部を小さく設計することで、実際には二メートル程度の縫いぐるみが、五十メートルの巨大さを持つように見えるように工夫されています。この遠近法的なパースの組み込みは、二次元のスクリーン上で三次元的な奥行き感を強調する効果を持っています。
「強遠近法」セットの技法
このようなイリュージョンを生み出す技法は、ミニチュアセットにおける「強遠近法」セットの技法にも見られます。
